日本化学会誌(化学と工業化学)
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メチルシランチオールにおける分子構造と安定配座のAb Initio SCF MO研究
大作 勝
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1986 年 1986 巻 11 号 p. 1371-1376

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抄録

種々の基底関数を用いたメチルシランチオールに関するab initio SCF MO計算の結果を報告する。分子構造パラメーターの実測値は,3-21G+d(0.8C+0.6S+0.4Si)の基底によって非常によく再現されることが判明した。得られた分子構造パラメーターを他の構造類似分子について得られているものと比較,検討した。この分子ではSi-S結合軸のまわりでトランス,ゴーシュの回転異性が考えられ,STO-3G,STO-3G*の基底ではゴーシュ形がやや安定,3-21G,3-21G*,3-21G十dの基底ではトランス形がやや安定と計算され,これから,両者の間の熱力学的安定性の差異は,あまり大きぐないことが判明した。これは得られているエネルギー差の実験結果,40±30cm-1,ca.0.11kcal/mol(ゴーシュ形がトランス形よりやや安定)をよく説明している。Si-S結合軸のまわりの回転のポテンシャルを計算し,これを実測データ,その他のチオール類の場合におけるものと比較,検討した。双極子能率の計算値は,基底関数の違いによってかなり変化した。しかしながら,どの基底による計算値も実測双極子能率の傾向,μ(ゴーシュ)>μ(トランス)をよく説明した。これらの傾向は,構造類似化合物であるCH3SiH2SHにおける実測値,計算値の傾向とも一致した。

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