日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
石炭液化油重質成分の化学組成に関する研究 ―中性無極性成分中の発がん性物質の分析―
長谷川 淳村岸 武夫宇佐美 四郎
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 1988 巻 3 号 p. 311-320

詳細
抄録

石炭液化重質油の中性無極性成分の詳細な分析を行ない,発がん性物質の定量分析についてのベる。
溶剤処理炭(Solvent2,住友金属工業製,1t/日PDU)の重質留分(沸点340~400℃)中の中性成分を,二層充填液体クロマトグラフにより7種のフラクションに分離した(図1)。無極性フラクション(Fr1-6)をキャピラリーGC-MSにキャピラリーGC保持指標(RI)とHPLC-蛍光分析を結びつける新しい手法により分析し,多環芳香族探化水素(PAHs)をキャピラリーGCにより定量分析した。
直鎖パラフィン(C17-C34),単環から四環ナフテン(C12-C19)と単環から六環までの30の芳香環系を同定した(表2と4-6)。多い成分は,直鎖パラフィン(中性成分の17.2%),C0-C4置換フェナントレン,(12.8%),C0-C4ピレン(11.1%),C1-C6アセナフテン(7,2%),C0-C4 4,5-ジヒドロピレ(5.9%),C0-C6フルオレン(4.7%),C0-C4ベンゾフルオレン(3種の異性体,4.5%),C0-C4クリセン(3.0%)であった。クリセン,ベンゾ[a]アントラセン,ベンゾ[a]ピレンとジベンゾ[a,h]アントラセン系の発がん性物質は,中性成分の3.3%を占めた。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top