日本化学会誌(化学と工業化学)
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ランタニド(III)イオンによる生体内リン酸ジエステル化合物の効率的加水分解
小宮山 真八代 盛夫松本 洋一須磨岡 淳松村 一成
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1993 年 1993 巻 5 号 p. 411-417

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抄録

ランタニド金属イオンが,DNA,RNA,ならびにアデノシン3',5'-環状リン酸を極めて効率的に加水分解することを見いだした。加速効果は極めて大きく,数百万倍から1兆倍にも達する。たとえば,セリウム(III)イオン(0.01moldm-3)を触媒として用いると,pH7.2,50℃で,直鎖状DNAのリン酸ジエステル結合が,半減期3.6時間で加水分解された。これは,直鎖状DNAの非酵素的加水分解の世界最初の成功例である。また,RNA,アデノシン3',5'一環状リン酸も,それぞれツリウム(III)イオン,セリウム(III)イオンによりpH8.0,30℃で迅速に加水分解された(半減期は,それぞれ10分および36秒)。いずれの場合も,非ランタニド金属イオンはほとんど触媒効果を示さず,著しい触媒効果はランタニド金属イオンに特異的である。これらの結果は,生体機能を制御する人工酵素の活性中心としてランタニド金属イオンが非常に有望であることを強く示唆している。

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