日本化学会誌(化学と工業化学)
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逆抽出側水相にキレート剤を添加した含浸型液体膜系における希土類の透過機構
小島 紀徳中山 智香子上宮 成之松方 正彦
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1993 年 1993 巻 5 号 p. 574-578

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抄録

ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の逆抽出側水相への添加が,リン酸エステルを抽出剤として含有する含浸型液体膜を用いたLa,Pr,Nd混合系の透過機構に与える影響について検討した。DTPA無添加の時には逆抽出側水相中の水素イオン濃度の減少にともない希土類の透過流束も著しく減少し,pH3.0以上ではその透過はみられなかった。それに対しDTPA添加時にはpHによらず,ほぼ一定の透過速度となった。この現象を考察するにあたり透過の律速過程を検討した。膜厚の透過流束に対ずる影響,ならびに膜内拡散律速と仮定し算出した透過流束とDTPA添加時の実験値との比較により,DTPAの添加によって,透過における律速段階は逆抽出反応から錯体の膜内拡散に移行したことを見いだした。これは逆抽出側界面近傍においてDTPAと希土類金属イオンとが錯形成することにより,逆抽出側高pH領域でのプロトンによる逆抽出能力の低下を補うためである。

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