日本化学会誌(化学と工業化学)
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CoとNiでFeを複合置換した希土類ホウ化物磁石の腐食挙動
下斗米 道夫福田 泰隆尾崎 由紀子後藤 国宏
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1993 年 1993 巻 5 号 p. 651-655

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抄録

Nd-Fe-B系磁石のFeをCoとNiで複合置換した磁石が磁気特性と耐食性が両立する希土類ホウ化物磁石として提案されている。その磁石の高温多湿大気環境下・塩水噴霧下および溶液申での腐食挙動を明らかにし,従来の希土類磁石と比較検討した。粉末焼結法を用いて,Nd-Co-B系状態図にしたがう組成のNd-(Fe,Ca,Ni)-B磁石とそのNdをDy,PrやLaで置換した磁石を試料として用意した。希土類がNdやDyの試料では,70℃ で95%の相対湿度の環境で1000時間まで発錆はなく,35℃の塩水噴霧に対しても表面に薄い被膜が出来るだけで,従来のSm-Co磁石と同等の耐食性を示した。定電位法でアノード分極曲線を酸性溶液,中性溶液,アルカリ性溶液において測定した結果,腐食電位の改善に及ぼすNiの顕著な効果が明らかになった。また,アルカリ性溶液ではNiは不働態領域を発現させることを見いだした。標記磁石のこのような良好な耐食性には主相のNd2(Fe,Co,Ni)14Bの結晶粒の周囲に粒界相として存在するNd(Ni,Co)相が大きな役割を果していると考えられる。

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