日本化学会誌(化学と工業化学)
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広島および東広島における大気並びに雨水中の過酸化水素の測定
山下 敏広佐久川 弘藤原 祺多夫
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1994 年 1994 巻 12 号 p. 1127-1133

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抄録

大気中二酸化硫黄の硫酸への酸化剤として重要な過酸化水素(H2O2)の測定例は少なく,その地域的分布はあまり明らかにされていない。そこで広島市と東広島市で大気及び雨水中のH2O2を測定し,その時間的,地域的変動と生成起源について考察した。広島では大気中H2O2は0~3ppbvの範囲で測定され,日変化,季節変化を示した。東広島でも日変化,季節変化を示したがその濃度は広島に比べて約50%小さい値であった.一方,雨水中H2O2は初期降雨に高く,wash out, rain out効果があることが示唆され,また季節変化が存在する可能性が考えられる。大気中H2O2の光化学反応以外の直接の発生源の可能性として,焼却炉と自動車の排ガスを測定し,そのH2O2濃度を用いて広島と東広島でのH2O2発生量を算出した。どちらの発生量も広島では東広島より高い値を示し,広島では自動車による発生量がばい煙施設の発生量より約9倍大きいことが明らかになった。また人為起源のH2O2の大気中濃度への寄与度を大まかに算出したところ,大気中濃度の百分の一程度と予想された。

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