1997 年 1997 巻 12 号 p. 823-834
原始地球上での生命の誕生に先立ち,タソパク質や核酸の関連分子が無生物的に生成したと考えられている.本概究においては,生体関連分子の生成の場として,原始地球大気中や地球圏外環境を想定し,模擬実験を行った.原始地球大気がメタン・窒素・水というようなダイタソ型であった場合,火花放電によりアミノ酸前駆体・重合物(加水分解によりアミノ酸を生じる分子)や核酸塩基の生成が認められた.一酸化炭素・窒素・水を含む弱還元型大気を想定した場合,火花放電では有機物の収率は大幅に低下する.しかし,エネルギー源として高エネルギー粒子線を用いた場合には高収率でアミノ酸前駆体・重合物やイミダゾール,核酸塩基の一つのウラシルが生成することがわかった.アミノ酸前駆体の分子量は数百であり,アミノ酸の重合物の可能性が考えられる.アミノ酸前駆体は模擬星間塵環境実験でも生成した.原始大気が非還元的な場合には地球圏外有機物の役割が重要であると考えられる.核酸の前生物的合成に関しては現状では極めて問題が多い.タンパク質や核酸の機能,すなわち触媒活牲と自己複製能をもつような分子系の無生物的生成を証明することが今後の課題である.
この記事は最新の被引用情報を取得できません。