1998 巻 (1998) 11 号 p. 711-720
油脂, 石油製品, プラスチックなどは, 有機化合物であるがゆえに自動酸化による劣化が起こり, その防止は重要な課題である. 普通そのために使用されるフェノール類はその作用が分子構造によって著しく左右されるが, 活性と構造, 特に核置換基との関係については古く1960年代にすでに確立されたため, それ以降新しいフェノール系酸化防止剤は開発されていない. 本論文では, これに対して過去の考え方, すなわち置換基効果に疑問を持ち, オレフィン基をο-位に持ったフェノール類 (ο-ヒドロキシケイ皮酸誘導体) を分子設計した. これは過去に例を見ないほど高活性な酸化防止剤であった. ついでこの高活性は, 共役オレフィン基の, (1) フェノキシルラジカルの共鳴安定化によるラジカル捕捉速度の向上, (2) フェノキシルラジカル電子の局在化によるフェノキシルラジカルのカップリソグの防止, および(3) ペルオキシルラジカルの捕捉, などに基づいていることを明らかにした. さらに他の核置換基の効果についても検討し, ヒドロキシ基に対してο-, ρ-位の両方に置換基を導入することでさらに高活性な酸化防止剤を得ることに成功した. これについて, 半経験的分子軌道法により検討を加え, その高活性の起源と酸化防止作用機構を推察した.