日本化学会誌(化学と工業化学)
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二次元近赤外相関分光法によるタンパク質の変性の研究
村山 幸市王 岩Roumiana TSENKOVA尾崎 幸洋
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1999 年 1999 巻 10 号 p. 637-647

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抄録

著者らは一般化二次元近赤外相関分光法を用いて卵白アルブミンの熱および酸変性過程を研究した.近赤外分光法はタンパク質の構造や水和に関して,赤外,ラマン分光法とは異なつた独特な情報を与えるが,近赤外領域には数多くの倍音,結合音が重なって現れるので,近赤外スペクトルの解析は必ずしも容易でない.そこで著者らは,二次元相関分光法を近赤外スペクトルの解析に用いた.そうすることにより,水によるバンドとアミド基によるバンドを分離して観測することができた.タンパク質の濃度を摂動として45℃から80℃まで2℃ごと,pH5.8からpH2.4までpH 0.2ごとに同時,異時二次元相関スペクトルを計算した.その結果,熱変性では67℃から69℃の間に水和に大きな変化が生じ,その変化が引き金となって卵白アルブミンのunfolding過程が始まること,pH変性ではpH3 .0付近で水漁に大きな変化が起こり,ゲル化が始まることが明らかになつた.二次元相関近赤外分光法は今後タンパク質の水和と二次構造変化の研究に大いに役立ちそうである.

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