2009 年 11 巻 1 号 p. 30-36
本稿は、多言語併用者の個体によって構成される集団におけるいくつかの言語現象・言語変異を論じる。まず多言語併用現象が世界各地で広く観察されることを指摘し、バイリンガルの個体がモノリンガルより多い可能性を提示し、その社会的背景を概観する。そして多言語併用者集団特有の現象、例えばコード切り替え、言語の寄り合い、混合語などを具体例を挙げて紹介する。今後、世界各地に見られるこれらの現象の実態解明が進むのにつれて事例が蓄積され、これを実験を通じて進められる多言語併用者の固体の言語処理に関する研究の結果と綜合することによって、多言語併用のさまざまな側面が明らかになることであろう。