2009 年 11 巻 1 号 p. 59-67
認知リハビリテーションという観点から、失語症セラピーについて、筆者の臨床経験にもとづいて概説した。まず、失語症セラピーに関する歴史的変遷を概観した後に、失語セラピーにおけるシュールの刺激法の位置付けについて述べた。続いて、認知神経心理学的モデルに基づく言語情報処理過程の障害について、臨床例との対応という観点から概説した。最後に、100年以上前の大脳病理学時代に提唱された失語図式の今日的意義について考察した。局在ベースの大脳病理学と機能ベースの認知神経心理学は相反する考え方ではなく、登頂ルートが異なるものの、最終的には失語症という同じ山の頂に通じているはずであると述べた。