2017 年 19 巻 3+4 号 p. 164-170
【要旨】脳損傷後には、依存性、感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性、引きこもりなど、社会的場面における行動に様々な問題が生じてくる。前頭葉は社会的行動と関連する重要な脳領域であるが、その損傷の直接の結果として生じる行動障害は、アパシー、脱抑制、遂行機能障害という3つの症候群として考えることが可能である。アパシーは内側前頭前皮質、脱抑制は眼窩前頭皮質、遂行機能障害は背外側前頭前皮質の損傷とそれぞれ特異的に関連しているとの主張も見られるが、実際には病変と症候の対応関係はそれほど明解ではない。個々の症例における評価と対応においては、実生活の中で問題となる社会的行動障害がどのようなきっかけで生じるかを分析し、必要とされる具体的な能力の獲得を目指すことが必要である。