認知神経科学
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教育講演IV
脳損傷からみたヒトの視・空間認知機能のしくみ
鈴木 匡子
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2018 年 20 巻 1 号 p. 33-37

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抄録

【要旨】視覚情報は側頭葉に向かう腹側経路と頭頂葉に向かう背側経路で処理される。腹側経路は形態・色・質感などから対象を認知する際に働き,背側路は視覚情報を行為へ結びつける際に働く。両者はばらばらに機能しているわけではなく,相互に連携しながら働いているものの,その一部が損傷された場合には部位毎に特徴的な症状が出現する。腹側路の損傷では,形態,色,質感が独立して障害される場合があり,それぞれを処理する神経基盤は異なっている。背側路の損傷では,対象を見つけ,到達し、操作する各過程に障害が生じうる。代表的な症状としては,視覚性注意障害,道具の使用障害などがあり,視覚情報を行為に結びつける動的な過程の変容として捉えられる。このように,脳損傷患者の症状の観察から,視覚情報を意味や行為に結びつける過程を垣間見ることができるとともに,個々人における障害の本質を知って適切な対応につなげることができる。

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© 2018 認知神経科学会
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