2019 年 34 巻 3 号 p. 450-457
目的:胃X線検査におけるがん偽陽性率を下げるため,主に撮影法に関連した偽陽性の原因を検討した.
方法:2017年に関西労働保健協会(以下,当協会)で胃がんの任意型検診として実施された胃X線検査25,538件のうち477件(1.87%)を要精検と判定.そのうちがんが疑われて内視鏡による精密検査を実施の結果,“がん偽陽性”と診断された26症例を今回の検討の対象とした.胃X線撮影法は,日本消化器がん検診精度管理評価機構が提唱している任意型基準撮影法に加え,任意撮影として“前庭部圧迫による二重造影像”を実施している.
結果:がん偽陽性例は,初回健診時が最多(23.0%)で,部位別では胃角部に多い.形態的には瘢痕による胃角部変形や粘膜下腫瘍様を呈するもの,大きさでは2cm未満のものが多い.X線撮影と関連して,①透視観察中に気付かず追加撮影をしていない症例,②バリウム付着不良例,③残存バリウムによる二重造影不良例,④粘膜襞走行が圧迫により異常走行に見えた例,⑤萎縮性胃炎の粘膜不整が部分的に目立つ例,⑦撮影手技(前壁撮影法)に基づく例が挙げられる.
結論:がんとの鑑別に困るような画像を撮影しないためには,①体位変換の回数を増やしたりバリウムを追加したりしてバリウム付着をよくする,②標的部位のバリウムをきっちり抜く,③前壁撮影技術の向上と最適な空気量,④解剖学的特徴を捉え,透視観察中に異常に気付けるよう読影力を高める.