1970 年 32 巻 4 号 p. 357-367
尋常ざ性瘡患者92例,対照77例について血清脂質を薄層クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーによりその分画と脂酸構成分析を行なつた。脂質分析では,ざ瘡群が遊離脂肪酸,トリグリセライド画分は低値,コレステロールエステル画分は高値を示した。また総コレステロール,リン脂質は有意の差を認めなかつた。脂酸構成分析で,ざ瘡群の総脂質画分はオレン酸低値,リノール酸高値を示し,同様の変化はトリグリセライド画分のオレイン酸,リノール酸にもみられ,またざ瘡群の遊離脂肪酸,コレステロールエステル画分の脂酸構成にはとくに変化をみなかつた。以上の所見により尋常性ざ瘡患者の血清不飽和脂肪酸の異常が認められ,その変化はトリグリセライド画分に由来するものと推察された。