1976 年 38 巻 1 号 p. 52-56
肺癌の胸椎転移のため胸椎の圧迫骨折をきたし,下半身の麻痺した58才主婦の左耳後部に血性,漿液性の分泌物を付着する拇指頭大の赤色の軟かい腫瘤の発生をみた。腫瘤に比較的接して切除をしたが,術後約1年を経過するも再発や転移は認めない。組織学的に本腫瘤は,epidermoid cellとclear cellとより成り,両者に移行がみられた。Clear cellは表皮と連続的に発育していたが,明確な管腔形成や嚢胞形成は認めなかつた。ジアスターゼにより消化されるPAS染色陽性の顆粒(glycogen顆粒)をclear cellの胞体内に多量に認めた。