抄録
九州大学医学部附属病院皮膚科において過去5年間に経験した12例のpilomatrixomaについて臨床像, 病理組織学的所見および1例の電顕所見について報告した。組織所見および電顕所見にて自験12例のいずれにも脂腺および外毛根鞘への分化をみとめなかつたことから, 本腫瘍は未熟な多分化能を有する第一次上皮芽細胞から生ずるとするよりも, より分化した未熟な毛母細胞から生ずるものと考えた。さらに本腫瘍における間質はたんなる付随的なものではなく正常毛組織における毛乳頭に相当するもので, 腫瘍の増殖に密接な関連を有し, 一方では豊富な血管網からのいちじるしい出血が特徴的な石灰沈着の一次的要因と推測した。