1981 年 43 巻 Suppl 号 p. 974-983
明治39年(1906年)の開講以来昭和55年(1980年)までの75年間に, 九大皮膚科を受診したすべての悪性腫瘍患者を統計的に観察した。その結果, 患者実数·外来患者に占める悪性腫瘍患者の率ともに近年増加していることが実証された。中でもとくに増加している疾患は, Bowen病と乳房外Paget病であり, この両疾患では70才以上の症例が半数を越えることから, 診断技術の進歩に加えて, 平均寿命の延長が大きく寄与していると考えられた。また, 悪性黒色腫とリンパ腫·白血病も増加しており, これは年令分布が高令に片寄つていないため疾患自体の増加と考えられた。いつぽう, 有棘細胞癌と基底細胞癌は増加していない。また時代による疾患概念·治療の変化についても記載した。