西日本皮膚科
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統計
本邦における放射線皮膚悪性腫瘍の統計
岡崎 美知治井上 勝平緒方 克己
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1982 年 44 巻 5 号 p. 824-831

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抄録

昭和55年末までのわが国における放射線皮膚悪性腫瘍の報告例358例を集計し, 次のような結果を得た。
1) 性比は約2対1で男性に多く, 平均発症年令は53.1才であつた。また, 男性の方が高令者に多い傾向を示した。
2) 病理組織学的には有棘細胞癌が約60%を占めるが, 最近基底細胞癌や肉腫の発生例が増えている。
3) 照射原疾患としては良性皮膚疾患群が約60%を占め, なかでも真菌症, 湿疹·皮膚炎群, 結核性疾患, 血管腫などへの照射例が多かつた。また, 近年悪性腫瘍治療への照射が急増しており, 職業性被曝による発癌例は依然として減少していない。
4) 60Coや深部レ線などの高エネルギー線照射例はそれぞれ4例ずつみられ, いずれも肉腫の発生が多かつた。
5) 潜伏期間の長さは, 原疾患別には職業性>良性疾患>悪性腫瘍, 組織病型別には基底細胞癌>有棘細胞癌>肉腫の傾向がみられ, また線源別には, 限界線による発癌例で潜伏期が短いという結果が得られた。
6) 限界線照射による発癌例では, そのほとんどが過照射によるものであつた。

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© 1982 日本皮膚科学会西部支部
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