西日本皮膚科
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症例
晩発性皮膚ポルフィリン症の5例
野中 薫雄大神 太郎吉田 和徳江上 和也矢野 右人佐藤 彬
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1983 年 45 巻 3 号 p. 383-392

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抄録

皮膚症状が比較的軽度な晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)の5例を報告した。全例臨床症状は露出部の色素沈着および小瘢痕を伴つていたが, 日光との関連性には気づいていなかつた。またアルコール飲料大量摂取歴があり, 初診前に軽度の肝機能障害を指摘されていた。尿中ポルフィリン体定量の結果では, 5例中4例はウロポルフィリンを優勢に排泄していた。1例のみは定量値が比較的低値を示していたが, 薄層クロマトグラフィーにて, 尿中ポルフィリンパターン像の異常を示していた。病理組織学的には, 露出部皮膚のPAS染色標本で, 全例に真皮乳頭層の血管周囲にPAS陽性物質の沈着を認め, 免疫螢光抗体法直接法では同部にIgGの沈着を伴つていた。1例に瀉血療法を施行し, 総量4,000mlの瀉血で, 尿中ポルフィリン体は著明に減少し, ほとんど正常値に回復した。血清鉄や肝機能の改善もみられた。尿中ポルフィリン体パターン像も, ウロポルフィリン, ヘプタカルボキシルポルフィリン優勢像から, コプロポルフィリン優勢像へと変化した。このことは瀉血療法がウロポルフィリノーゲン デカルボキシラーゼ活性を増加させるような機構によつて, 尿中ポルフィリン量が変化したことも推測された。PCTの診断および経過観察の上で, 尿中ポルフィリン体のパターン分析は定量法とともに重要な検査法の一つであると思われる。

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© 1983 日本皮膚科学会西部支部
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