1983 年 45 巻 4 号 p. 590-594
87才男子および47才男子の2例の顔面の基底細胞上皮腫に対して, パパニコロー染色による細胞診を施行した。両症例ともに細胞診陽性で, しかもその細胞診所見は基底細胞上皮腫に特徴的であり, HE標本とも一致する所見であつた。すなわち, ライトグリーンに一様に染色される小型の腫瘍細胞が密に配列し, クロマチンパターンは粗大顆粒状で, 細胞像は比較的均一であつた。また, 両症例に対して, 擦過, 穿刺吸引, 捺印細胞診の3つの方法を施行した。その中でも, 穿刺吸引細胞診は, 手技が簡便であること, 陽性率が高いこと, 皮下腫瘍を含めて適用範囲が広いことなどから, 他の2方法に比べてきわめて有用であると考えた。