1983 年 45 巻 6 号 p. 965-971
老人性角化腫(senile keratosis, SK)を伴つた有棘細胞癌(SCC)症例において, 単クローン抗体を用いた酵素抗体法で, 反応性浸潤リンパ球およびマクロファージを表面形質の差異により亜群に識別, 両腫瘍間で比較·検討し, 以下の結果を得た。両部とも浸潤リンパ球はほとんどT細胞であつたが, T細胞のsubsetsで明らかな差が認められた。すなわちLeu2抗原陽性細胞(L2a(+)細胞)の増加傾向, 腫瘍内侵入像および腫瘍直下集簇像をSK部で認めたが, SCC部ではみられなかつた。またLangerhans細胞をSK部の腫瘍内および間質に相当数認めたが, SCC部ではいずれも比較的減少していた。以上よりSKの腫瘍部および腫瘍直下にL2a(+)細胞を誘導しLangerhans細胞で処理される抗原が確かに1種以上存在すると考えた。