西日本皮膚科
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治療
Ibuprofen Piconolの前臨床的研究
—尋常ざ瘡に対する作用の評価として—
谷口 恭章斉田 勝古田 研一中冨 一郎矢野 忠則荒木 栄喜中尾 輝人橋口 照司辻 正義山川 洋志高井 吉晴我謝 充弘
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1985 年 47 巻 5 号 p. 888-898

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抄録

Ibuprofen piconol(IPPN)は非ステロイド外用抗炎症薬であり, 皮膚科領域を対象とするベシカム製剤(久光製薬), スタデルム製剤(鳥居薬品)として臨床的に使用されている。この5% IPPN製剤が, 尋常ざ瘡に対して有効性を示す可能性があることがわかつたので, 実験的に尋常ざ瘡に対する作用およびその機序を検討した。5% IPPN軟膏は5% IPPNクリームと同様に強い外用抗炎症作用を示し, IPPNはEscherichiacoli由来の化学遊走因子と同様に, Propionibacterium acnes由来の化学遊走因子における白血球遊走を10-6M以上の濃度で, 濃度依存性に強く抑制した。このことはIPPNの外用抗炎症作用を支持するものであると考えられる。また5% IPPNクリームはtetradecaneによる実験的面皰に明らかに強い作用を示した。すなわち, 面皰毛孔径の増大を抑制し, 皮膚の総脂質, トリグリセライド, 遊離脂肪酸の増加を抑制した。さらにIPPNは皮膚リパーゼ活性およびP. acnes由来のリパーゼ活性を強く抑制した。一方, IPPNは角質に対して影響を示さず, in vitroで各種の細菌, 真菌に対して一部に弱い作用は認められたものの, ほとんど抗細菌, 抗真菌作用を示さなかつた。経皮適用したIPPNは経表皮性に吸収されるのみならず, 経毛包性にも吸収され, 毛包などに高濃度に分布していた。以上のようにIPPNあるいは5% IPPN製剤は実験的面皰の毛孔径の増大に対して強い抑制作用を示し, 白血球遊走阻止作用を含めて, 外用抗炎症作用を示し, また毛包などにも高濃度に分布していることから尋常ざ瘡に対する作用が期待され, その作用は主にIPPNの抗炎症作用に由来するものと思われた。実験的面皰において皮膚の脂質に対する作用も認められたが, 脂質と尋常ざ瘡の関連におけるIPPNの効果は臨床的に確認できなかつた。

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© 1985 日本皮膚科学会西部支部
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