西日本皮膚科
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シンポジウム
薬剤誘発ループス
宮脇 昌二小野寺 英朗坂本 賢司
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1986 年 48 巻 3 号 p. 428-435

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抄録

厳密な意味での薬剤誘発ループスとは, 薬剤の連用によつてSLE類似症状が誘発され, その中断によつて症状が消失する病態であり, iatrogenic lupusとも呼称しうるものである。薬剤としてはhydralazine, procainamide, isoniazid, diphenylhydantoinなどが関連するが, 欧米と比較して本邦での発現はきわめて低率である。臨床像としてはSLEよりも女子の罹患率が低く, 中高年令層に多い。発熱, 関節痛, 筋痛などの発現が大で, 腎症や中枢神経症状の発現は低率である。約20%程度に皮疹が出現し, 蝶形紅斑, 麻疹様, 猩紅熱様, 扁平苔癬, 滲出性紅斑などと多彩である。病因として素因が重視されており, 上記薬剤の代謝に関係する肝N-acetyltransferase活性が遅延する個体(slow acetylator)に薬剤ループスが起りやすく, 逆に本邦人の90%が該当するrapid acetylatorの個体群には発現が低率である。また薬剤が核酸や核蛋白を質的に変化させ, 抗histone抗体などの抗核抗体の産生を促し, SLE様症状を誘発する機序も重要である。

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© 1986 日本皮膚科学会西部支部
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