西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
研究
皮膚線維腫にみられる泡沫細胞塊と紡錘形空隙の病理組織学的·電顕的検討
 
勝俣 道夫佐藤 貴浩野崎 清恵
著者情報
ジャーナル 認証あり

1988 年 50 巻 1 号 p. 87-91

詳細
抄録

皮膚線維腫には線維芽細胞様細胞と幼若な膠原線維が束状に配列する病変の中央部に泡沫細胞塊や紡錘形空隙がしばしば存在するが, その点について詳細な検討を行つた報告は認められない。著者らは皮膚線維腫190検体より病変中央部に泡沫細胞塊や紡錘形空隙を有する10検体を選び出し, それらの病理組織学的検討とPAP法によるlysozymeの検索を施行し, 1例についてはJEM-1200EX-AMS自動連続撮影電子顕微鏡による観察を行い, 以下の結果をえた。1)これら10例の病変中央部は泡沫細胞塊のみよりなるもの, 泡沫細胞塊と紡錘形空隙が混在するもの, 紡錘形空隙が成熟した膠原線維束の中に存在するものの3型に大別された。2)Lysozymeの検索では全症例とも陽性所見はえられず, lysozyme陽性を示すほかの線維組織球性病変の泡沫細胞様細胞とは何らかの機能的差異のあることが推測された。3)電顕的に泡沫細胞は細胞質内が比較的低電子密度の脂肪滴様顆粒で満たされた細胞で, これらの顆粒の融合や細胞内構造の変性も認められた。紡錘形空隙は通常の固定下では巨大な無構造物質として認められ, この空隙は細胞内構造の変性により生じるものと推定された。4)以上よりこの病変中央部はまず泡沫細胞塊が生じ, 以後経時的に泡沫細胞塊と紡錘形空隙が混在する病変, 紡錘形空隙が成熟した膠原線維束の中に存在する病変となると考えられた。

著者関連情報
© 1988 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top