西日本皮膚科
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症例
定型疹に線状および環状皮疹を併発した扁平苔癬
水野 正晴土井 尚加藤 良隆
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1988 年 50 巻 2 号 p. 253-258

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抄録

61才男子の扁平苔癬の定型疹に線状扁平苔癬と環状扁平苔癬を併発した1例を報告した。腹部のほぼ正中線上の手術瘢痕に一致して紅色から褐色の軽度落屑性の皮疹がみられ, 軽度そう痒を伴つていた。その皮疹の辺縁は褐色の色素沈着を示し, 中心部は紅色やや萎縮状, 環状の形態を示した。左鼠径部に沿つて小指頭大から拇指頭大の同様皮疹が数個配列してみられ, 環状の形態がより明らかであり, これらは環状扁平苔癬と考えられた。左腋窩から左上腕内側にかけて粟粒大から小指頭大の同様皮疹がほぼ中心を線状, 列序性に配列して認められ, 線状扁平苔癬と考えられた。両下腿前面には, 米粒大を主とする多角形の褐色扁平丘疹が散在性に認められ, 軽度そう痒, 落屑を伴い, 一部は融合傾向を示し扁平苔癬の定型疹と考えられた。病理組織学的には典型的な扁平苔癬の像を示した。Suttonは環状扁平苔癬を3型に分類しているが, 本症例はこれらの型に合致せず, 丘疹が拡大することなく, はじめから環状斑状を示し, atrophic annular型というのが適当と考えられた。とくに誘因なく扁平苔癬の定型疹および非定型疹が多発性に生じることはまれではないかと思われた。また, なんらかの皮疹発生の素地のある表皮に外力(日光や薬剤性障害, とくに繰り返される摩擦)が加わつて表皮基底層に障害が起り, それが引き金となり皮疹が出現するのではないかと推察された。

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© 1988 日本皮膚科学会西部支部
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