西日本皮膚科
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症例
顔面に多発したApocrine Hidrocystoma
加藤 晴久濱田 稔夫
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1988 年 50 巻 6 号 p. 1027-1030

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抄録

顔面に多発したapocrine hidrocystomaの1例を報告した。症例は63才女子で, 初診の約3ヵ月前に右上眼瞼内側部および左外眼角部に自覚症状を欠く皮疹が存在するのに気づいた。初診時には右上眼瞼に直径0.3cm, 表面淡褐色の柔らかい丘疹と, 左外眼角部に直径0.7cm, 半球状に隆起した, 表面正常皮膚色の透光性のある嚢腫状の皮疹が認められた。病理組織学的に, 前者は3つの嚢腫腔を有する腫瘍であり, 嚢腫壁は数層の好酸性の細胞質とクロマチンに富む円形の核を有する立方状ないし円柱状の細胞により構成され, 断頭分泌像が認められた。またその細胞質内には, PAS染色陽性, ジアスターゼ消化抵抗性の顆粒が多数認められた。後者は単一の嚢腫から成り, 壁を構成する細胞はやや扁平であり, 典型的な断頭分泌像はみられず, 細胞質内には少量のPAS染色陽性顆粒が認められるに過ぎなかつた。両者ともよく発達した結合織に取り囲まれていたが, いずれにも筋上皮細胞は認められなかつた。酵素組織化学的検索は行つていないが, 組織像および臨床的特徴から, 自験例を多発性apocrine hidrocystomaと考えた。本症の多発例は, 本邦ではこれまでに2例の報告があるのみで, きわめてまれであると思われたのでこれを報告するとともに, 文献的考察を行つた。

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© 1988 日本皮膚科学会西部支部
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