西日本皮膚科
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研究
成人T細胞白血病·リンパ腫と帯状疱疹の遅延型過敏反応
—水痘·帯状疱疹ウイルスによる免疫能賦活の可能性について—
出盛 允啓緒方 克己井上 勝平
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1989 年 51 巻 5 号 p. 933-941

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抄録

細胞性免疫能検査のひとつとして遅延型過敏(DTH)反応が実地診療において有用性があるかを検討する目的でATLと帯状疱疹患者にPPD, candida, SK-SDの3種抗原とmitogenであるPHAの計4種を使用して皮内テストを施行した。ATL予後判定には従来から汎用されているPPDよりもPHA, candidaを用いたDTH反応の方が有用であることが判明した。各DTH反応の大きさとATL患者の生存期間の相関の強さは(PHA+candida)/2>PHA>candida>>SK·SD>PPDの順に大きかつた。ATL死亡27例中で日和見感染症(カンジダ症, 単純ヘルペス, 帯状疱疹)が認められなかつたのは6例(22%)にすぎず, そのDTH反応は弱く, うち5例は入院2ヵ月以内の早期に死亡した。この6例は日和見感染症が発症する期間すらなく短期間で死亡したと推察した。ATL, 帯状疱疹群とも健常者群に比して4種類のDTH反応はすべてが著明に低下していた。しかも低下レベルは同程度であつた。老年者(50∼69才)ATLの14例中5例(36%), 死亡ATL患者27例中8例(30%)に帯状疱疹が発症した。高令者帯状疱疹は加令による免疫能低下が原因で発症したものが多く, 帯状疱疹発症の結果としてDTH反応が低下したのではないと推察した。帯状疱疹顕症時に低下していたDTH反応は免疫能に強い影響を与えるような基礎疾患の認められない症例においては経時的に上昇し, しかも長期間にわたつて高値を維持するが, ATLではDTH反応の上昇が見られなかつた。上述のデータから, 宿主の免疫能に予備能力があるなら水痘·帯状疱疹ウイルスは低下している宿主の免疫能を帯状疱疹顕症化によつて賦活している可能性があると推察した。

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© 1989 日本皮膚科学会西部支部
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