西日本皮膚科
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研究
老年者における爪成長速度および概年リズムの解析
島本 順子島本 博幸中村 英雄
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1990 年 52 巻 5 号 p. 993-1000

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抄録

老年者入院患者128例(年齢80.4±8.2歳, 男31例, 女97例)を対象として, 5指ならびに5趾の爪成長速度を1ヵ月に1回, 1年間にわたつて計測した。1年間の平均爪成長順位はIII, II, IV, I, V指ないしI, III, II, IV, V趾の順であつた。1ヵ月毎の5指ないし5趾平均成長速度を最小自乗スペクトル法を用いて1年周期の余弦曲線に当てはめ, mesor, amplitude, acrophaseを算出した。全身状態が爪成長速度概年リズムにおよぼす影響について検討するために, 目的変数としてmesor, amplitude, 説明変数として年齢, 性別, 血中free T4濃度, 血中free T3濃度, 痴呆の程度, 寝たきりの有無, 血清albumin濃度, 血中hemoglobin濃度を用いて重回帰分析を施行した。指爪成長速度において, 年間平均爪成長速度であるmesorは痴呆の重症化および加齢に伴つて低値となり, 血中free T3濃度と正相関を示した。指爪成長速度の年差の1/2であるamplitudeは, 女子では男子に比して小であり, 血清albumin濃度と正相関し, 加齢と共に減少した。趾爪成長速度においてはamplitudeのみが加齢と共に減少した。指爪, 趾爪共に6, 7, 8月の夏季に成長が著明であつた。

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© 1990 日本皮膚科学会西部支部
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