1992 年 54 巻 3 号 p. 554-571
ケロイドおよび肥厚性瘢痕患者279例を対象に, ヘパリン類似物質軟膏を対照薬として, 二重盲検比較試験によりトラニラストの有用性を検討した。有効性に関しては, 自覚症状改善度, 他覚症状改善度および全般改善度ともTR(トラニラスト細粒剤+プラセボ軟膏)使用群がHO(プラセボ細粒剤+ヘパリン類似物質軟膏)使用群に比し有意(p<0.01)に優れていた。中等度改善以上の改善率は, 自覚症状改善度でTR群54.5%, HO群29.3%, 他覚症状改善度でTR群47.9%, HO群22.4%であった。また, 全般改善度では, TR群56.2%, HO群26.7%であった。症状別に改善率をみると, TR群ではそう痒が約50%と最も高く, 他の症状でも30∼40%の改善率がみられた。副作用発現率は, ヘパリン類似物質軟膏が2.4%に対しトラニラストは8.7%であったが, いずれも各々のプラセボによる副作用の発現率との間に著しい差はなく, 内容的にも重篤なものではなかった。有用性では, TR群がHO群に比し有意(p<0.01)に優れていた。有用以上の有用率は, TR群で54.0%, HO群で24.1%であった。以上, トラニラストはヘパリン類似物質軟膏に比べ, ケロイドおよび肥厚性瘢痕治療剤として明らかに有用な薬剤であることが確認された。