西日本皮膚科
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症例
Keratosis Punctata of the Palmar Creases
水谷 恵津子水谷 仁岡田 浩明清水 正之
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1992 年 54 巻 5 号 p. 884-888

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抄録

手掌, 足底のflexion creases(屈曲しわ)に限局して角化性丘疹が多発する特異な臨床像を呈するkeratosis punctata of the palmar creases(KPPC)の1例を経験した。手掌の丘疹の病理組織所見は不全角化のない肥厚した角質栓によって表皮が受皿状に陥凹し, 陥凹部では顆粒層の菲薄化と表皮突起の消失を認めた。連続切片による観察では病巣部中央に汗管が認められた。本疾患は1947年Arnoldの報告以来世界で20弱の報告をみるが, 過去においては手掌, 足蹠に散在性に角栓様角質塊を有するkeratosis punctata palmaris et plantaris(KPPP)と区別されず, 統計学的に一括して集計されているため, その正確な罹患率が把握出来ない状態である。黒人におけるKPPCの罹患率は3∼8%とかなり高頻度とされているのに対し, 白人の報告は少なく, KPPCの罹患率には人種差の存在が考えられる。東洋人においては本邦におけるKPPPとして報告されているものの中にKPPCと考えられる報告例が過去に2例あるに留まり, KPPCという名称での発表は自験例が最初の報告である。われわれは日本人におけるKPPCの罹患率を知る目的で, 外来患者300名につきKPPCの頻度の調査を行ったが, KPPCは一例も認められず, KPPPを一例認めたのみであった。これより, 黒人における報告と異なり, 日本人では白人同様KPPCは罹患率の低い疾患と考えられた。

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© 1992 日本皮膚科学会西部支部
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