1994 年 56 巻 1 号 p. 100-104
昭和56年12月から平成4年4月までの10年4ヵ月間に佐賀医科大学皮膚科で経験したスポロトリコーシス21例について統計的観察を行った。1)年間の平均症例数は2例で, 外来患者総数に対する比率は0.14%を占めた。2)男性9例, 女性12例と女性にやや多く, 男女比は1:1.3であった。3)年齢分布は10歳以下が2例, 20歳代1例, 50∼70歳代が18例と中高齢者が大部分を占めた。4)秋から冬にかけての発症が70%を占めたが, 夏の発症も4例(19%)認めた。5)農業従事者が43%, 外傷の既往が67%に認められた。6)発症部位は上肢9例, 顔面6例, 下肢5例, 頭部1例であった。7)病型は固定型11例, リンパ管型10例とほぼ相半ばした。8)近年, 非定型的臨床例が増加している。9)スポロトリキン反応は15例に施行し, 14例(93.3%)に陽性を示し特異性の高い補助診断法として有益と思われた。10)組織内菌要素は生検を実施した18例中13例(72.2%)に認められ, そのうち7例は多数の菌要素が認められた。11)治療はヨウ化カリウムの内服により全例治癒した。