西日本皮膚科
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治療
テルビナフィンが奏効した老人のケルスス禿瘡
—本邦における老人のケルスス禿瘡を集計して—
田沼 弘之高須 博浅谷 雅文橋本 明彦阿部 美知子
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1994 年 56 巻 3 号 p. 531-537

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抄録

75歳の男性, 無職。相模原市在住。初診約1ヵ月前に, 後頭部から右側頭部にかけて毛孔一致性の膿疱を伴った鱗屑を付着する紅斑局面が出現し, 次第に易抜毛性をみとめ当科を受診。頭部病巣部の鱗屑および組織片より, Trichophyton rubrumを分離。病理組織学的に, 表皮は不規則に肥厚し, 真皮から皮下脂肪織にかけて稠密な細胞浸潤をみとめた。毛包を中心に好中球, リンパ球, 組織球, 巨細胞から構成される肉芽腫性反応がみられ, 角層および毛包内外にPAS, Grocott染色陽性の菌要素が存在した。治療はテルビナフィン125mg/日経口投与にて1週後には膿疱は消失し, 2週後には軽度の鱗屑を残すのみで治癒と判定した。平成4年12月現在, 再発はみられない。本剤はケルスス禿瘡に対して極めて有効かつ安全性の高い治療法のひとつと考えられた。また, 本邦における70歳以上の高齢者に発症したケルスス禿瘡25例を総括した。その特徴として, 1)女性に罹患し易い, 2)原因菌は25例中13例(52%)がT. rubrumで, 3)ステロイド剤の外用が誘因となり, 頭部浅在性白癬より移行したと思われる症例が多いなどが挙げられた。

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© 1994 日本皮膚科学会西部支部
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