1996 年 58 巻 4 号 p. 625-628
Keratoacanthoma(KA)とsquamous cell carcinoma(SCC)は時に鑑別に苦慮することがある。近年, 細胞増殖活性や癌抑制遺伝子の発現の有無が固定された標本によっても可能となった。そこで, 今回我々は癌抑制遺伝子にはp53抗体, 細胞増殖活性にはproliferating cell nuclear antigen(PCNA)抗体及びKi-67抗体を用いてKAとSCCの免疫組織化学染色を行い, 両者の鑑別に有用であるかどうかを検討した。その結果PCNA, Ki-67染色においてはSCCでは腫瘍細胞巣の全体に亘って陽性像を呈するdiffuse patternと辺縁のみに陽性を呈するperipheral patternのいずれの像もみられたが, KAではperipheral patternのみがみられた。p53染色でもSCCのみがdiffuse patternを呈した。以上よりdiffuse patternを示すものはSCCであることが示唆された。またp53の陽性率は非露光部より露光部の方が高く, 癌化の要因として露光部ではp53の関与が強いと思われた。