西日本皮膚科
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研究
アトピー性皮膚炎患者の血漿中および皮膚病変部のロイコトリエンB4値の定量とそれらの相関性に関する検討
中山 樹一郎寺尾 浩松尾 真二郎利谷 昭人堀 嘉昭
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1996 年 58 巻 5 号 p. 810-814

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抄録

典型的なアトピー性皮膚炎患者9名の血漿中および病変部(紅斑, 痒疹)のロイコトリエンB4値を測定し両者間の相関性, 病理組織像とくに炎症性細胞浸潤の有無との関連性を検討した。結果は5名の患者が両者とも高値, 3名の患者が両者とも低値, 他の1名は両者の値が解離していた。皮膚病変部のロイコトリエンB4値が高値を示した症例の病理組織像ではいずれも真皮乳頭層あるいは血管周囲性に小円形細胞の密な浸潤がみられた。免疫組織化学染色にてこれらの浸潤細胞は主にTリンパ球であることがわかり肥満細胞, 好酸球, マクロファージ, 好中球などはわずかに認められたのみであった。当科初診時血漿中ロイコトリエンB4値を測定した計92名のアトピー性皮膚炎患者で100pg/ml以上を呈した患者は39名, 内13名について塩酸アゼラスチン長期内服療法後のロイコトリエンB4値を測定した。その結果治療4週後には臨床症状の改善とともに明らかな減少傾向がみられた。以上よりアトピー性皮膚炎患者の皮膚病変部のロイコトリエンB4値は血漿中の値とほぼ正の相関を示しアトピー性皮膚炎の病態形成にロイコトリエンB4が重要な役割を演じていることが強く示唆された。

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© 1996 日本皮膚科学会西部支部
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