西日本皮膚科
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症例
いわゆるMalignant Trichilemmoma
—サイトケラチンの染色パターンから被覆表皮ないし外毛根鞘漏斗部に分化していると考えられた症例—
小辻 智恵梅林 芳弘岩田 充大塚 藤男
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1997 年 59 巻 2 号 p. 238-240

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抄録

66歳の男性の右下腿に生じた19×15mmの結節を全摘した。病理組織像で, 表皮全層におよぶ腫瘍巣がみられた。角質物質を満たした陥凹周囲にclear cellが増殖し, これらはPAS染色陽性でジアスターゼで消化された。その周囲にはclumping cellを含む異型性の強い好塩基性細胞が増殖しており, 顆粒層を経ずに角層に移行するいわゆるtrichilemmal keratinization様の部分もみられた。辺縁部の柵状配列はみられなかったが, これらの所見からはmalignant trichilemmoma(MT)と診断するのが妥当であると考えられた。サイトケラチンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色で腫瘍細胞の分化を検討したところ, 染色パターンは被覆表皮および外毛根鞘漏斗部と一致した。よって外毛根鞘へ分化するとされているMTよりはBowen病と同一のものと考えられた。HE染色所見のみからMTと診断するとかなりの誤診例があると思われ, 免疫組織化学的検討が大切であると考えた。

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© 1997 日本皮膚科学会西部支部
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