西日本皮膚科
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症例
旋尾線虫幼虫による皮膚爬行症の1歳半女児例
大滝 倫子大城 由香子坂下 さゆり赤尾 信明
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ジャーナル 認証あり

1997 年 59 巻 4 号 p. 598-600

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抄録

1歳半の女児。初診: 平成8年5月29日。背部の線状の紅斑を主訴として九段坂病院皮膚科を受診した。初診約1週間前に下背部の線状紅斑に気づいたが放置したところ, 徐々に上背部に伸長した。4月末, 生ホタルイカの摂食歴あり。現症: 下背部より上背, 項部, 側背部にかけ幅約2mmの紆余曲折し末端部に軽い浮腫を伴う線状の紅斑が認められた。好酸球3%, 旋尾線虫間接蛍光抗体法は陰性であった。病理組織像で真皮内に好酸球, リンパ球の浸潤と真皮深層と皮下脂肪織内に虫体断面が認められた。体幅100μm, 角皮に皮棘なく, 筋層はpolymiarian, coelomyarian型, 側索の形態などにより旋尾線虫幼虫type Xと同定した。皮膚生検後再燃はなかった。1974年の大鶴らの報告例を最初に, 本症の報告は52例あるが, そのうち皮膚爬行症は32例であった。男女比は5:1で男性に多く, 1歳半の女児は極めて稀であった。皮膚爬行症の好発部位は腹部で, 背部は比較的稀であった。本症は1992年にピークとなり1995年には減少の気配をみせたが, 本例の発症から今後の多発も危惧される。

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© 1997 日本皮膚科学会西部支部
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