西日本皮膚科
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治療
FK506軟膏第III相比較試験
—アトピー性皮膚炎(躯幹·四肢)に対する吉草酸ベタメタゾン軟膏との群間比較試験—
FK506軟膏研究会
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1997 年 59 巻 6 号 p. 870-879

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抄録

FK506(タクロリムス)軟膏の第III相試験の一環として, アトピー性皮膚炎に対する有効性および安全性を評価する目的で, 躯幹·四肢の皮疹を対象に本疾患の治療に繁用されている吉草酸ベタメタゾン軟膏(リンデロン®V軟膏0.12%)を対照薬として無作為化群間比較試験を実施した。最終全般改善度評価での「中等度改善」以上の改善率は, FK506軟膏群(FK群)93.6%, 吉草酸ベタメタゾン軟膏群(BV群)90.5%で, 両群間に有意差は認められなかった。治験薬と対照薬との改善率の差の90%信頼区間は-3.9%∼10.1%で, Δ=10%とした場合同等性を検証できた。安全性に関しては, 概括安全度評価で「安全である」と判定された患者はFK群87.5%, BV群91.1%で, 両群間に有意差は認められなかった。ただし被験部位への治験薬塗布による刺激感の発現率は, 大部分の症例で皮疹の改善とともに発現しなくなったもののFK群の方が有意に高かった。今回の成績からFK506軟膏はアトピー性皮膚炎の躯幹·四肢の皮疹に対して, 現在広く臨床の場で使用され, 有用性の確立しているBV軟膏と同等の有効性を示すことが明らかとなった。ステロイド剤とは異なる構造と作用を有するFK506の軟膏剤が, アトピー性皮膚炎の躯幹·四肢の皮疹に対して吉草酸ベタメタゾン軟膏と同等の有効性を示したことは, 本疾患に対する治療の選択肢を拡大するものと考えられた。

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© 1997 日本皮膚科学会西部支部
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