1999 年 61 巻 1 号 p. 11-14
23歳の男性。感冒様症状に続発して関節痛, 腹痛を伴う半米粒大の紫斑が四肢に出現した。末梢血, プロトロンビン時間, 部分トロンボプラスチン時間に異常なく第XIII因子活性は低下していた。病理組織学的にはleukocytoclastic vasculitisの像を呈しており, Schönlein-Henoch purpuraと診断した。広範な胃, 十二指腸潰瘍も認められたためアドレノクロム, トラネキサム酸等に加えオメプラゾールを併用した。プレドニゾロン(30mg/day)内服による治療にても腹部症状の明らかな改善はみられず, 腸管エコーにて上部小腸に広範囲に強い炎症所見が認められ, また第XIII因子活性の著明な低下も認められたため, 中心静脈栄養の施行とともに第XIII因子1200単位の投与を開始した。投与開始翌日には腹部症状は劇的に改善した。著明な腹部症状を伴う成人のSchönlein-Henoch purpuraに対して, 第XIII因子の投与は試みる価値のある治療法と思われた。