1999 年 61 巻 3 号 p. 342-345
68歳の女性。Adult T-cell lymphoma (ATL) の診断にて1997年10月16日より化学療法および副腎皮質ステロイドを経口投与中, 翌17日頃より右肩の手掌大, 灰色の厚い鱗屑痂局面に気づく。10月20日当科初診時に, 鱗屑痂の真菌検鏡で菌糸および胞子型の菌要素の集塊を認めたが, 毛への寄生形態は不明。サブロー培地にてMicrosporum gypseumを分離した。抗真菌剤外用で1ヵ月後には軽快, 脱色素斑となった。臨床およびカセイカリ標本所見より生毛部黄癬に一致するものと考えた。我が国では生毛部黄癬は10例の報告があり, うち8例からM. gypseumが分離されている。ATLに基づく免疫不全が本症の特異な臨床像に関与したものと考えた。