1999 年 61 巻 5 号 p. 645-648
51歳の男性。下咽頭有棘細胞癌に対するX線照射中に, 照射部の頚部両側に一致してTricophyton rubrum(T. rubrum)による体部白癬の発生がみられた。クロトリマゾールクリームの外用のみで約3週間後には略治した。白癬患者より得たT. rubrumの感染した鱗屑にX線を照射した後に培養したところ, 100Gyまでの照射では発育には影響がみられなかった。またモルモット皮膚にX線を照射した場合, 20Gyでも表皮ランゲルハンス細胞の数および形態に明らかな変化がみとめられた。これらの実験結果から, 治療量のX線により皮膚の免疫機構は容易に傷害されるのに対して, 真菌の発育は抑制されないため, 自験例のようなX線照射部に一致した体部白癬が生じたものと考えられた。