西日本皮膚科
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治療
アトピー性皮膚炎に対する合成疑似セラミドクリームの有用性及び安全性の検討
—ヘパリン類似物質含有軟膏との比較—
中村 哲史本間 大柏木 孝之坂井 博之橋本 喜夫飯塚 一
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1999 年 61 巻 5 号 p. 671-681

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抄録

アトピー性皮膚炎においては角質細胞間脂質の減少にともない水分保持機能が低下し, バリアー機能が損傷されている。8%合成疑似セラミドクリームは天然セラミド2の類縁体を含有し, 角質細胞間脂質の減少した皮膚に外用することにより, 角層の乾燥, 落屑やバリアー機能を改善することが期待される。今回我々はアトピー性皮膚炎患者の乾燥皮膚に対し本クリームを外用し, その臨床症状と水分保持能, 経皮水分喪失量(transepidermal water loss: TEWL)が改善するかどうかをヘパリン類似物質含有軟膏と比較検討した。調査対象はアトピー性皮膚炎患者29例で, 前腕皮膚の外用により, 皮膚所見·角層機能を含む総合効果判定において86%で有用性を認めた。TEWLについては外用前値と有意差を認めなかったが, 角層内水分量(コンダクタンス)は外用前値と有意差をもって増加した。ヘパリン類似物質含有軟膏との比較ではTEWLとコンダクタンスともに有意差を認めなかったが, 皮膚所見を含む有用性においては合成疑似セラミドクリームが有意に有用であった。副作用は局所の発赤が1例に認められたが外用中止とともに改善した。以上より8%合成疑似セラミドクリームは, アトピー性皮膚炎の乾燥皮膚に対し有用性の高い外用剤と考えられた。

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© 1999 日本皮膚科学会西部支部
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