2000 年 62 巻 1 号 p. 89-94
蕁麻疹患者における治療内容とその効果を検討する為に長崎大学皮膚科を受診した患者につき,アンケートによる予後調査を施行した。急性蕁麻疹患者(73名),慢性蕁麻疹患者(61名),寒冷蕁麻疹患者(13名),日光蕁麻疹患者(9名),機械性蕁麻疹患者(18名)にそれぞれアンケート用紙を送付し回収できた69名と回収出来なかった症例23名はカルテにてその経過を検討した。現在の蕁麻疹の状況に関して,治癒している患者は急性蕁麻疹80%,慢性蕁麻疹32%,その他32%で,物理性蕁麻疹を含む慢性蕁麻疹患者では,急性蕁麻疹に比し,治療効果が低い傾向が見られた。治療に関しては,抗ヒスタミン剤,抗アレルギー剤の内服と外用療法が主体を占めたが,無治療と答えた患者も各群で16~20%程度に見られた。急性蕁麻疹患者では今回観察期間が5年と短いこともあったが,多くが発症後1年以内に軽快していた。逆に慢性蕁麻疹患者では,発症後1年以上持続している患者が半数以上見られた。このほかアレルギー歴は物理性蕁麻疹患者で低い傾向が見られたが,全身症状の有無,出現時間帯に差は見られなかった。いわゆる物理性蕁麻疹患者では,複数の因子により蕁麻疹が誘発され,必ずしも単一の原因で発症するのではないという結果が得られた。