2000 年 62 巻 3 号 p. 333-337
6ヵ月,男児の右膝直下内側部に生じた血管芽細胞腫(中川)の1例を報告した。皮疹は48×35 mmの硬い浸潤を触れる扁平隆起性の灰紫紅色局面で,圧痛があり,周囲は白色調で軟毛を伴っていた。環状の軟毛増生部にほぼ一致して,発汗テストにより多汗を認めた。組織学的には,真皮中層から深層さらに皮下組織にかけて,血管内皮様細胞が大小の血管腔様構造を形成し,これら管腔構造は一部では吻合して,胞巣状に増生していた。胞巣状の増生を示す部位ではスリット状の管腔の周囲に紡錘状の血管周皮細胞様細胞の増生を認めた。免疫およびレクチン組織化学染色の結果より,充実性腫瘍胞巣部は主に血管周皮細胞より構成されていた。また小管腔を構成している内皮細胞は,拡張管腔を構成している細胞より分化度の低い血管内皮系細胞で構成されていた。有毛性の症例について文献的検索を行い,考察を加えた。