2000 年 62 巻 5 号 p. 614-619
多発性骨髄腫は全身の骨髄で腫瘍性形質細胞が増殖する疾患であるが,稀に髄外腫瘤形成を示す。今回我々は,下肢に本邦報告例では最大級の皮膚転移巣を生じたIgG-λ型多発性骨髄腫の症例を経験した。患者は57歳女性で広島にて被曝歴があった。化学療法および血漿交換療法が施行されたが,皮膚転移を生じてから約8ヵ月で死に至った。1982年以降,本邦で報告された骨髄腫の皮膚転移例は50症例あった。本邦における多発性骨髄腫の皮膚転移症例はIgD型の報告が欧米に比べて多かった。多発性骨髄腫の皮膚浸潤や予後と蛋白型とは相関関係はないと報告されているが,我々が調べた50症例においてIgD型多発性骨髄腫は比較的早期に皮膚転移を生じる傾向があった。蛋白型別による予後に明らかな差は認められなかった。