2001 年 63 巻 6 号 p. 613-616
39歳,女性の尋常性天疱瘡の1例を報告した。初診時には,四肢,体幹,口腔内,外陰部に水疱,びらんが認められた。病理組織学的検討,蛍光抗体直接法,ELISA法による血中抗デスモグレイン(Dsg)1,3抗体価測定を行った。これらの検査の結果より,尋常性天疱瘡粘膜皮膚型と診断し,ステロイド内服を開始した。経過中,臨床症状の停滞がみられたため,免疫抑制剤も併用した。治療期間中,定期的に抗Dsg 1,3両方の抗体価を測定し,これらと臨床症状との関連性を評価してみた。抗Dsg 1抗体価は皮膚症状と相関し,一方抗Dsg 3抗体価は粘膜症状と相関していた。このことはいわゆるDsg compensation theoryを裏付けると思われた。そしてまた,抗Dsg抗体価を測定することによって,確定診断できるだけではなく,病勢の把握もできると考えられた。