西日本皮膚科
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症例
皮膚浸潤を認めた播種性糞線虫症の1例
中野 純一郎宮里 肇岸本 信三宮国 毅野中 薫雄
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2002 年 64 巻 1 号 p. 51-54

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抄録

56歳の男性。抗HTLV-1抗体陽性。気分不良を主訴に某病院入院。低栄養状態,イレウスで加療されていた。糞線虫感染を認めたためivermectinの投与を行ったが,自宅近くへの転院を希望し,当院へ紹介入院となった。入院時所見にて,腹壁を中心に点状の紫斑を認め,当科を受診した。糞線虫の皮膚浸潤を疑い生検したところ,真皮膠原線維間に糞線虫の幼虫が認められた。また喀痰,便,十二指腸の生検からも糞線虫の幼虫を確認し,イレウス,呼吸器感染症も起こしていたことから播種性糞線虫症と診断した。沖縄県において,日常の臨床でしばしば糞線虫症に遭遇する。通常は無症状もしくは軽度の消化器症状が主であるが,患者が何らかの原因で免疫能の低下があるとき虫体は異常に増え,腸粘膜を通過し,主に血行性に全身へ散布される。その際,消化管内から持ち込まれた細菌による深刻な敗血症,肺炎,髄膜炎などを合併することがある。今後,高齢化社会になるにしたがい,多くの症例を経験するのではないかと思われた。

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© 2002 日本皮膚科学会西部支部
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