2002 年 64 巻 2 号 p. 182-186
類天疱瘡に治癒後に生じた黒色表皮腫様皮疹についてはこれまでほとんど注目されてない。当教室で経験した類天疱瘡治癒後に生じた黒色表皮腫様皮疹について検討した。対象は5例で,すべて女性,全例に全身に水疱が多発,組織所見で表皮下水疱を認め,直接及び間接蛍光抗体法によって類天疱瘡と診断した。5例とも水疱の新生はステロイド内服療法により止まった。四肢とくに手背及び足背の水庖が治癒した後に鶏卵大までの褐色から黒褐色の黒色表皮腫様皮疹が認められた。組織学的には正角化を伴う角質増殖に加えて表皮の肥厚と乳頭腫症がみられ,メラニンの滴落と血管周囲性炎症細胞浸潤を認めた。免疫組織化学的検索ではヒト乳頭腫ウイルスは陰性であった。これらの皮疹は数週間後に自然軽快した。