2002 年 64 巻 4 号 p. 423-426
63歳,男性。初診2ヵ月前に肺癌が疑われ,同時期より躯幹·四肢にそう痒を伴う小水疱が出没するようになった。初診時には明らかな水疱は認められず,躯幹·四肢に栂指頭大のびらん,痂皮,色素斑が多発しており,稗粒腫,粘膜疹はみられなかった。初診9日後,辺縁に小水疱を伴う紅斑が出現したため,水疱性類天疱瘡を疑い,生検。組織学的に表皮下水疱が認められ,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にC3の線状沈着が認められた。蛍光抗体間接法でIgG抗表皮基底膜部抗体は1M食塩水剥離皮膚の真皮側に反応したが,各種免疫プロット法でははっきりした抗原は検出できなかった。初診3ヵ月後,症状は増悪し,躯幹に緊満性水疱が多発。プレドニゾロン20mg/日の内服により皮疹は著明に改善した。プレドニゾロン隔日5mg内服まで減量し水疱の新生はなかったが,患者は肺癌と慢性腎不全が悪化し,死亡した。