西日本皮膚科
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症例
類上皮肉腫の1例
城戸 真希子今山 修平瓜生 美樹河崎 玲子竹下 盛重上田 説子古江 増隆
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2004 年 66 巻 6 号 p. 585-589

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抄録

27歳の男性。半年前より右第I趾蹠側基部が疼痛を伴って発赤, 腫脹するようになり, 抗菌剤内服にて軽快するものの再燃の度に増大し当科を受診した。初診時には圧痛を伴った不均一に淡紅色調で境界不明瞭の7×4cmの板状硬結局面が存在し, 表面には痂皮を伴う不整な陥凹性瘢痕を認めた。生検では真皮のほぼ全層に淡い胞体を持つやや大型の細胞が密に増生し, その細胞は線維成分で満たされた好酸性の豊富な胞体を持ち, 核は卵円形で明瞭な核小体を持つ類上皮細胞様細胞であった。一部分には, 好塩基性に染まり紡錘形の核を持つやや小型の線維芽細胞様の細胞が索状に配列していた。胞体内の線維成分はビメンチンに強陽性, サイトケラチン(AE1/AE3)は類上皮細胞様細胞のみ淡く陽性であった。類上皮肉腫と診断し広範囲切除術を行った。電顕では, 類上皮細胞様細胞は大きな胞体, 偏在する核, 不完全な基底膜構造を持ち, 小型のミトコンドリアは多数存在するが細胞内小器官には乏しく, 胞体の大部分を10nmの中間径線維が占めていた。線維芽細胞様細胞は核膜が過剰で核の輪郭が入り組んでおり, 細胞内小器官がよく発達し不規則な基底膜様の構造に包まれていた。興味深い所見は, これら2種類の細胞の間にgap junctionが存在したことである。以上より, 本腫瘍は胞体内に間葉系の中間径線維を持つ類上皮細胞様細胞と線維芽細胞様細胞とが密接に関係しながら増生した腫瘍であり, その意味では滑膜肉腫と類似していると考えた。

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© 2004 日本皮膚科学会西部支部
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